マンションの管理組合が、修繕積立金を米国債や投資信託で運用している――。
少し前までなら、そんな話を聞いても「本当に?」と思ったかもしれません。私自身も最初に知ったときは驚きましたし、心の中ではインフレヘッジを考えれば正直試みてほしいのですが、合意形成が難しいだろうと思っていました。
管理組合の資金といえば、普通預金や定期預金で安全に保管するのが主流。
ところが最近では、社債や米国債で運用する管理組合の事例が報じられ、さらには投資信託の活用を検討する動きまで見られるようになりました。
もちろん、こうした取り組みはまだ一部の先進的な管理組合に限られていますが、この動きには注目する価値があると考えています。
なぜなら、その背景にはマンション管理を取り巻く環境の大きな変化があるからです。
なぜ修繕積立金の運用が話題になっているのか

そもそも修繕積立金とは、将来の大規模修繕に備えて区分所有者全員で積み立てるお金です。
外壁補修、屋上防水、給排水管更新、エレベーター改修など、マンションを維持していくために必要不可欠な費用に使われます。
ところが近年、この修繕積立金を取り巻く環境は大きく変化しています。
最大の理由は、建築費や人件費の高騰。
10年前に作成した長期修繕計画では十分だったはずの積立金が、現在では不足してしまうケースが増えています。
加えて、販売時に毎月の負担を安く見せたいという売主側の都合が優先され、90%以上のマンションでは新築販売時に修繕積立金が低めに設定されているのが現状。
その結果、将来的に積立金不足へ陥る管理組合も少なくありません。
そこにインフレが進めば、現金で保有している修繕積立金の実質的な価値は目減りしていきます。
将来を見据える視点のある管理組合(理事長)であれば、「預金に置いておくだけで大丈夫なのか」という問題意識が生まれるのも不思議ではありません。
また、修繕積立金が不足したとしても、売主であるデベロッパーや管理会社が不足分を補填してくれるわけではなく、ましてや公的な助成などもありません(そもそもそんなものがあったら、戸建ての購入者との整合性が取れません)
最終的に負担するのは購入者(区分所有者)です。
実際に運用している管理組合の事例とその難しさ

有名な事例として知られているのが、武蔵小杉の大規模タワーマンション(パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー)です。
このマンションでは、数十億円規模の修繕積立金の一部を社債で運用し、多額の運用益を確保していることで知られています。
背景には、金融業界で働く区分所有者が多く居住していたことや、専門的な知見を持つ人材が理事会運営に関わっていたことがあります。
また近年では、別のマンションで米国債による運用事例も報じられるようになりました。米国債は価格変動リスクがあるとはいえ、日本国債や預金よりも高い利回りを期待できるためです。
さらに一部では、投資信託の活用について議論する管理組合も出てきています。
まだまだ少数派ではありますが、「修繕積立金は預金で保管するもの」という常識に変化の兆しが見え始めているのは事実です。
しかし私は、こうした運用が簡単に広がるとは思っていません。
短期的には元本割れリスクは免れませんので、理解を得るのは大規模マンションになればなるほど困難ですし、そもそも長期で居住しようとする人ばかりではないので、修繕積立金の行方に興味がない人も一定数います。合意形成は至難の業でしょうね。。。
また、相場が下落したタイミングで責任問題に発展する可能性もありますし、修繕が迫っている場合には評価額の回復を待たずに損失を抱えた状態で資金の取り崩しに追い込まれる可能性があります。
次に、理事会の継続性の問題があります。
管理組合の理事は毎年交代することも珍しくありません。投資方針を長期的に維持することは簡単ではなく、管理規約にしっかりと明記しておく必要があります。そして、管理規約の変更は普通決議ではなく特別決議が必要なのもハードルが高いところ。
こうした運用が実現できるのは、もともと資金に余裕がある大規模マンションであること、理事会に専門的な知識をもつこと、そして区分所有者にも意識が高い人がそろっていることなど、ほんの一部の管理組合に限られるのが現実です。
「運用する管理組合」よりも「稼ぐ管理組合」に注目している

実は、管理組合の財務改善策は運用だけではありません。私がより現実的だと感じているのは、「管理組合が自ら稼ぐ」という考え方です。
例えば、携帯電話基地局の設置、自動販売機収入、駐車場の外部貸し、太陽光発電、共用施設利用料などです。特に大規模マンションでは、屋上に携帯電話基地局を設置して安定収入を得ている事例もあります。
これは投資信託のような価格変動リスクがありません。
また、空き駐車場問題を抱えるマンションでは、外部貸しによって収入を確保しているケースもあります。
管理組合にとって本当に重要なのは、「運用で一発逆転を狙うこと」ではなく、将来必要な修繕費を確実に確保することです。その意味では、リスクを取って増やすよりも、安定的に稼ぐ仕組みを作る方が現実的な選択肢と感じています。
今後は立地や設備だけでなく、管理組合の財務力や経営力そのものがマンションの資産価値を左右する時代になる時代の到来となりそうです。こうした先進的な管理組合の取り組みに注目していきたいと思います。
























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